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めっきの低反射性とは?

はじめに

めっきの中でも「低反射めっき」は、光を反射させずに吸収・拡散させることで、映り込みや眩しさを防ぐ機能を持つ特殊な処理です。カメラや光学機器、精密測定装置など、光の制御が求められる分野で欠かせない技術として利用されています。代表的な処理には、深みのある黒色を実現する黒クロムめっき、均一な皮膜を形成できる黒色無電解ニッケルめっき、防錆性にも優れた亜鉛の黒色クロメート処理などがあります。

当記事では、低反射めっきの原理や特徴、反射率の比較、選定時のポイントを分かりやすく解説します。

めっきの低反射性とは?

1.めっきの低反射性とは?

めっきの低反射性とは、 光が表面に当たった際に反射する割合が少ない性質のことを指します。通常、金属の表面は光を強く反射しますが、特定の処理を施すことで反射を抑え、光沢を抑えた落ち着いた外観に仕上げることが可能です。このような低反射めっきは、照明機器やカメラ部品、光学機器、軍需・航空関連部品など、反射が性能や安全性に影響する分野で広く利用されています。
代表的な処理方法としては、黒ニッケルめっきや、亜鉛めっきの黒色クロメート処理、銅の黒化処理などがあります。黒ニッケルめっきは装飾性と耐食性を兼ね備え、反射を抑えつつ高級感のある仕上がりを実現できます。亜鉛の黒色クロメート処理は防錆性に優れ、産業機器や電子部品の筐体などに採用されています。また、銅の黒化処理は光吸収性が高く、光学機器の内部部品などに適しています。
低反射性を高めるめっきは、見た目の美しさだけでなく、機能面でも重要な役割を果たします。用途や目的に応じて、最適なめっき素材と処理方法を選定することが求められます。

めっきの低反射性とは?

2.めっきにおける低反射性の役割・原理

低反射性のめっきは、「いかに光を反射させないか」を追求する技術です。装飾めっきが金属光沢を生かして美しく光を反射させるのに対し、低反射めっきは光の映り込みや眩しさを防ぐことを目的としています。その原理は、 表面の皮膜によって光を吸収して熱エネルギーに変換する方法と、微細な凹凸を設けて光を拡散させる方法に大別されます。どちらの仕組みも、反射を抑えつつ用途に応じた最適な光学特性を実現するために用いられています。
このような仕組みにより、低反射性のめっきは光学機器やカメラ部品、計測装置などで重要な役割を果たしています。また、銅の黒色化処理は防錆性の向上と同時に反射率を低減し、外観の統一感を保つ効果があります。導電性の高い銅は鮮やかな金属光沢を持ちますが、その反射を抑えることで落ち着いた印象を与え、機能面とデザイン性の両立を実現しています。

めっきの低反射性とは?

3.低反射を特徴とする代表的なめっき

低反射性を持つめっきには、用途や目的に応じてさまざまな種類があります。ここでは、代表的な低反射めっきとして、黒クロムめっき、黒色無電解ニッケルめっき、そして亜鉛めっきの黒色クロメート処理(六価)を紹介します。

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3-1.黒クロムめっき
黒クロムめっきは、 反射防止めっきの代表格として知られ、高い光吸収率を誇る黒色の皮膜が特徴です。光を効果的に吸収して反射を抑えるため、光学機器の鏡筒内部やカメラの絞り羽根、精密測定機器など、迷光防止が求められる部品に多く採用されています。耐熱性・耐摩耗性・耐食性にも優れており、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。
黒クロムめっきでは薬品に六価クロムが用いられる場合がありますが、皮膜中に残留する六価クロム量は極めて少なく、RoHS指令の基準値を超えるケースは一般的にはありません。なお、環境負荷の低減を目的として三価クロムを使用した黒クロムめっきも登場していますが、発色はやや淡く、深みのある黒色を出す点では六価タイプに劣る傾向があります。

3-2.黒色無電解ニッケルめっき
黒色無電解ニッケルめっきは、 電気を使わず化学反応によって皮膜を形成する「無電解めっき」の一種です。ニッケルとリンの合金皮膜を基盤とし、表面を酸化または硫化処理することで黒色を発色させます。反射率が低く、光の映り込みを抑えられることから、光学部品や精密測定機器などに広く利用されています。
電気めっきと異なり、電流の影響を受けないため、複雑な形状の部品や穴の内部にも均一な厚みでめっきできる点が大きな特徴です。また、非導体への施工も可能で、寸法精度が求められる製品に適しています。耐食性・耐摩耗性にも優れており、見た目の美しさと機能性を両立できる低反射めっきとして注目されています。

3-3.亜鉛めっきの黒色クロメート(六価)
亜鉛めっきの黒色クロメートは、 亜鉛めっきの表面にクロム酸塩を反応させて形成される化成皮膜で、反射を抑えた黒色の外観を持つめっきです。主に六価クロム型と三価クロム型の2種類があり、六価タイプは銀の酸化物を皮膜中に含ませて深みのある黒色を実現します。一方で、環境負荷の低い三価タイプは、コバルトや硫黄を利用して黒色を発色させるのが特徴です。
いずれのタイプも比較的高い耐食性と耐摩耗性を備えており、コスト面でも優れています。反射率が低く、外観の落ち着いた仕上がりから、装飾用途や機能部品の反射防止目的などに広く利用されています。ただし、皮膜自体は化成処理によるもののため、擦れや衝撃で傷がつきやすく、取り扱いには注意が必要です。

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4.黒色めっきの反射率はどれくらい?

黒クロムめっきや黒色無電解ニッケルめっきは、一般的な金属表面に比べて光の反射を大幅に抑える性質を持ちます。これらのめっきは、光を吸収または拡散することで反射率を低減し、迷光防止や視認性の向上に貢献します。 反射率は波長や入射角によって異なり、特に可視光(380~780nm)の範囲で測定されることが多く、角度が浅くなるほど反射率は高くなる傾向があります。
黒クロムめっきでは、波長が短い光ほど反射率が低下し、数%~10%台という非常に低い値を示すこともあります。黒色無電解ニッケルめっきも光沢の有無やブラスト処理などの表面処理の違いによって反射率が変化し、よりマットな処理を施すことで反射をさらに抑制できます。用途に応じた表面処理や仕上げを選ぶことで、機能性と外観性を両立した低反射面を実現できます。

めっきの低反射性とは?

5.低反射めっきを選ぶポイント

低反射めっきを選定する際は、求める光学性能と使用環境を明確にすることが大切です。反射をどの程度抑えたいのか、また耐久性や耐食性、温度変化への強さなど、使用条件に応じて適しためっきを選ぶ必要があります。ここでは、その具体的な判断ポイントを紹介します。

5-1. 光学的性能の要件を明確にする
低反射めっきを検討する際は、まず光学的な要件を明確にすることが必要です。 どの波長の光を、どの程度まで反射を抑えたいのかを定義することで、最適なめっき仕様を選定できます。たとえば、可視光域での反射を抑えたい場合と、赤外線領域での反射防止を目的とする場合では、必要な皮膜構造や材料特性が異なります。
また、反射を完全に防ぐのではなく「どの角度からの光を抑えたいのか」という入射角の条件も考慮が必要です。鏡筒や光学センサーなど、使用環境に応じた光学要件を事前に整理することで、性能の最適化とコストバランスを両立した選定が可能になります。

5-2. 耐久性や環境条件も考慮する
低反射めっきを選ぶ際には、光学特性だけでなく、使用環境に応じた耐久性や安定性も重視する必要があります。たとえば、 屋外や高温環境で使用される部品では、耐食性や耐熱性の高いめっきを選ぶことで、長期間にわたり性能を維持できます。また、頻繁に摩擦や接触が発生する機構部品では、耐摩耗性に優れた皮膜を選ぶことが重要です。
めっき後の環境負荷やメンテナンス性も考慮すべき要素です。六価クロムを使用する処理は高い性能を発揮しますが、環境規制への対応が求められる場合があります。使用目的や設置環境を踏まえ、性能と安全性の両面から総合的に判断することで、信頼性の高い低反射めっきを実現できます。

まとめ

低反射めっきは、光の反射を抑えて映り込みや眩しさを防ぐ技術で、光学機器やカメラ部品などに広く利用されています。代表的な処理には黒クロムめっき、黒色無電解ニッケルめっき、亜鉛めっきの黒色クロメートなどがあり、それぞれ反射率低減や耐食性に優れます。
光の吸収や拡散によって反射を抑える原理を持ち、仕上げ方法や波長条件によって性能が変化します。選定時は、求める光学性能だけでなく、耐久性・環境条件・コストのバランスを考慮することが重要です。

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