めっきのひろば > めっきとは?概要や方法を解説!

めっきとは?概要や方法を解説!

はじめに

「めっき(Plating)」は、金属や非金属の基材表面に金属を薄く付着させる表面処理技術であり、物理的、化学的、または電気化学的な方法で実施されます。めっきは古代から人々に使用されており、特に装飾目的で金や銀が使用されたことが知られていますが、現代では製品の耐久性や機能性を向上させるために不可欠な技術となっています。電子機器、自動車産業、医療機器、航空宇宙分野など、非常に多くの産業で利用されており、その重要性は年々増しています。この記事では、めっきの歴史、定義、分類、技術的手法、応用分野などについて、幅広く触れていきます。

1.めっきの歴史

まずは、人類とめっきとの長い歴史について振り返ってみましょう。

古代のめっき技術

めっき技術の起源は、紀元前の古代文明に遡ることができます。古代エジプトやメソポタミア、ギリシャ、ローマなどでは、金属の表面に貴金属を薄く施す技術が存在していました。融点の低いスズを溶かして塗布する方法は、人類のめっき史においての原点の一つと言えるでしょう。また、装飾品や宗教的な儀式に使われる物品に金や銀をめっきする技術も普及し、これらがめっき技術の原型となりました。

近代のめっき技術の発展

産業革命期(18世紀後半から19世紀)において、めっき技術は大きな進展を遂げました。特に、1800年にアレッサンドロ・ボルタがボルタ電池を発明したことが、電気めっき技術の発展に寄与しました。その後、1830年代から40年代にかけて、電気めっきの技術が開発され、産業界に広まりました。
19世紀中頃、イギリスのバーミンガムにあるエルキントン商会が1840年に電気金・銀めっきの特許を取得し、商業生産を開始しました。これにより、めっき技術は装飾品だけでなく、産業用途にも広がりを見せました。

電気めっきの発明

めっきとは?概要や方法を解説!

電気めっきの発明は、めっき技術に革命をもたらしました。1805年にイタリアのルイジ・ヴァレンティノ・ブルニャテッリが、電気を使って金属を析出させる方法を発見し、これが電気めっき技術の原型となりました。この発見は、めっきの精度を飛躍的に向上させ、工業的な生産において広く応用されることになりました。
19世紀後半には、電気めっき技術が工業的に発展し、電解液の改良や電流制御の進歩により、金属表面に均一で高精度なめっき膜を形成することが可能となりました。これにより、金属の外観を美しく仕上げるだけでなく、耐腐食性や耐摩耗性を向上させる技術として重要性を増していきました。また、この時期には無電解めっきの技術も発展し、金属以外の基材に対してもめっきを行うことができるようになりました。

2.めっきの定義と目的

めっきとは、基材(金属やプラスチックなど)の表面に金属を薄膜として析出させることによって、基材の物理的・化学的性質を改善し、製品に新たな機能を付加する技術です。めっきの目的は大きく分けて次の3つに分類できます。

①装飾性の向上

めっきとは?概要や方法を解説!

めっきの最も初期の用途は装飾でした。金や銀を基材にめっきすることで、物体に美しい外観を与えることができ、貴族や王族の装飾品として使用されました。現代でも、ジュエリーや高級時計、さらには自動車の装飾部品など、多くの製品に装飾目的でめっきが施されています。金属の表面に薄い層で金や銀、クロムなどの高光沢金属を付けることにより、製品はより魅力的に、そして高級感を増すことができます。

②耐食性の向上

めっきとは?概要や方法を解説!

鉄などの金属は、湿気や酸素、塩分に触れると錆びやすく、腐食が進行します。めっき技術は、金属の表面に耐食性のある金属をコーティングすることで、こうした腐食を防ぎ、製品の寿命を延ばします。特に亜鉛めっきやニッケルめっきなどは、腐食から金属を保護するために広く利用されています。亜鉛めっきは、鋼鉄などの鉄系材料に施され、塩害の影響を防ぐため、橋梁や車両の部品、家電製品などに多く見られます。

③機能性の向上

めっきとは?概要や方法を解説!

めっきは単なる装飾や耐久性向上だけでなく、機能面でも重要な役割を果たします。たとえば、金めっきや銀めっきは、高い導電性を持ち、電子機器の端子や接点、回路基板などに利用されます。また、耐摩耗性や滑り性を高めるために、カーバイドやチタンなどの金属を用いてめっきすることもあります。これにより、金属部品の摩耗を減少させ、機械の性能を維持することができます。

3.めっきの方法とは?

めっき技術はその工程によって大きく、「湿式めっき」「乾式めっき」に分けられます。それぞれの技術には独自のメリットがあり、使用される素材や目的によって適切な方法が選択されます。

「湿式めっき」は、電解反応または化学反応を使用して金属を基材表面に析出させる技術です。また、名前にもある通り、液体の中で電解反応や化学反応を行うのが特徴です。電気めっき、無電解めっきが、あてはまります。

「乾式めっき」は、真空中やガス中で金属を堆積させる技術です。こちらは液体を用いずに、物理的、科学的な方法でめっきをかけます。溶融めっき、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)が、あてはまります。

次に、各めっきの方法を見ていきましょう!

①電気めっき

まずは、湿式めっきから見ていきましょう。

電気めっきは、最も広く利用されているめっき方法で、めっき液に金属イオンを含んだ溶液を使用し、電気を流すことによって基材表面に金属膜を形成します。金属イオンが電流の影響を受けて基材表面に還元されることで、金属が析出します。これにより、均一で高精度なめっきが可能です。主に装飾、耐食性向上、導電性向上などを目的に使用されます。

②無電解めっき

無電解めっきは、電気を使用せずに化学反応を利用して金属を基材表面に析出させる技術です。無電解ニッケルめっきはその代表的な例であり、均一で高耐食性を持つ膜を形成するため、特に電子機器や航空機部品などに広く使用されています。

③溶融めっき

ここからは、乾式めっきについてみていきましょう。

溶融めっきは、金属を溶かして基材をその溶融金属に浸漬することでめっきを行う技術です。亜鉛めっきやアルミニウムめっきがこの方法に該当します。この方法は、金属表面に強固な膜を作り、特に耐食性を高めるために使用されます。

④PVD(物理蒸着)

PVD(Physical Vapor Deposition)は、金属を高温で蒸発させ、その蒸気を真空中で基材表面に凝縮させる技術です。PVDは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの手法があり、比較的低温(200~600℃)で処理が可能なため、素材への熱影響が少ないのが特徴です。この方法で得られる膜は、非常に硬く、耐摩耗性や耐熱性に優れているため、機械部品や工具に広く使用されています。

⑤CVD(化学蒸着)

CVD(Chemical Vapor Deposition)は、ガス中で化学反応を起こし、基材表面に金属を析出させる方法です。半導体産業で広く利用され、非常に均一で高品質な薄膜を得ることができます。CVDには、熱を利用する「熱CVD」や、プラズマを用いる「プラズマCVD」などの種類があり、目的や材料に応じて使い分けられています 。

4. めっきの応用分野

めっき技術は、現代社会のさまざまな分野で活用されています。以下に、主要な応用分野とその重要性を示します。

電子・通信機器産業

めっきとは?概要や方法を解説!

電子機器においては、金属の表面に金や銀をめっきすることで、導電性やはんだ付け性が向上します。特に、プリント基板(PCB)やICチップ、コネクタの端子部分に金めっきが使用され、機器の信頼性や寿命を確保するために欠かせません。

三ツ矢の電子・通信機器産業のめっきについてはこちら!

自動車産業

めっきとは?概要や方法を解説!

自動車産業では、外装部品の美観を向上させるためのクロムめっきや、耐食性を向上させるための亜鉛めっきが施されています。また、電子機器やセンサー、ECU(電子制御ユニット)の接点部分にも高精度なめっきが使用されています。自動車の耐久性や性能向上に寄与しています。

三ツ矢の自動車産業のめっきについてはこちら!

医療機器産業

めっきとは?概要や方法を解説!

医療機器では、耐食性や生体適合性が求められるため、金やチタン、白金などの金属でめっきを行うことが一般的です。特に、手術用具やインプラント、ステントなどに利用され、これらの製品の信頼性や安全性を高めるために重要な役割を果たしています。

三ツ矢の医療機器産業のめっきについてはこちら!

航空宇宙分野

めっきとは?概要や方法を解説!

航空機や宇宙開発においては、極限環境における耐熱性や耐摩耗性が求められます。PVDやCVDを利用しためっき技術は、航空機のエンジン部品や宇宙開発用の精密機器において、高い性能を確保するために欠かせません。

三ツ矢の航空宇宙産業のめっきについてはこちら!

めっきのひろばトップに戻る
page top