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半導体検査装置とは?
はじめに
スマートフォンや自動車、家電など、毎日の生活を支えるあらゆる電子機器には半導体が必要です。しかし、半導体はわずかな欠陥が致命的な不良につながる繊細な製品であり、製造過程での検査精度がそのまま品質と信頼性を左右します。
当記事では、半導体検査と半導体検査装置の種類、半導体の製造工程、半導体検査を行うタイミングについて解説します。半導体検査と製造工程の全体像を整理し、知識を深めましょう。
1.半導体検査の種類
半導体検査は、設計仕様を満たしているかを確認し、品質と信頼性を確保するための工程です。半導体は電子機器の頭脳として欠かせない部品であり、その製造には極めて高い精度が求められます。
わずかな欠陥でも性能や安全性に影響を及ぼすため、各工程で厳密な品質検査が行われます。検査は外観検査と機能検査の2つに分類され、それぞれ異なる観点から不良の有無を見極めます。以下では、外観検査と機能検査それぞれの特徴を解説します。
1-1.外観検査
外観検査とは、 半導体素子(半導体デバイス)を外部から観察して欠陥を確認する工程であり、品質管理の基盤となる検査です。従来の目視確認も含まれますが、半導体では極小の欠陥まで検出する必要があるため、高解像度カメラやレーザー、電子顕微鏡が活用されます。
検査対象は、ウェーハ(ウエハ)の割れやひずみ、エッジの欠け、異物の付着、回路パターンの乱れなど、多岐にわたります。近年は、画像処理技術や機械学習による自動検出が進み、人間の目では発見困難な欠陥も正確かつ高速に抽出できるようになりました。これにより、大量生産される半導体でも品質と信頼性を安定的に確保できます。
1-2.機能検査
機能検査は、 半導体が設計通りに動作するかを確認するための工程で、電気特性検査として実施されます。ウェーハ段階からパッケージング後まで行われ、チップに電気信号を入力し、出力結果を期待値と比較することで性能を評価します。
電流や電圧、周波数特性、消費電力、信号の歪みといった多様なパラメータを詳細に測定することで、外観だけでは判別できない不良を見極めることができます。特にパッケージング後の最終工程では「ファイナル検査(F検)」が行われ、出荷前に製品の信頼性と機能性を最終確認します。こうした検査を通じて、高品質で安全な半導体製品の供給が可能となっています。
2.代表的な半導体検査装置の種類
半導体検査装置は、微細化が進む製造工程で欠陥を見逃さず、高品質な製品を保証するために不可欠なものです。検査時は、用途や検査対象に応じて多様な装置が活用されます。ここからは、代表的な半導体関連検査装置の種類について解説します。
2-1.気中パーティクル
半導体製造においては、クリーンルーム内の微細な塵やホコリが歩留まりや品質に直結するため、気中パーティクルカウンターで空気中の浮遊粒子数を計測し、環境を厳格に管理します。測定可能な粒径や機能は機種により異なることから、対象粒径や用途に応じた使い分けが必要です。
しかし、浮遊粒子の計測だけでは不十分なときは、落下塵カウンターを用いてウェーハ表面に沈降したパーティクルを測定します。落下塵カウンターは、試料収集板としてシリコンウェーハを用い、10μm以上の粗大粒子を分類・カウントする仕組みです。顕微鏡を併用すれば、さらに微細な粒子の影響も確認できます。
2-2.CD-SEM
測長SEM(CD-SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)は、 走査型電子顕微鏡を応用した微細寸法計測専用装置で、半導体製造ラインに必要不可欠な存在です。低加速電圧で電子線を照射することで、チャージアップや試料損傷を抑えつつ高精度な測定を実現します。
標準偏差3σで寸法の1%程度という高い再現性を持ち、ウェーハ上の微細パターン寸法を正確に把握することが可能です。さらに、ウェーハをカセットにセットし、レシピに基づいて自動的に取り出し・測定・格納を行う仕組みを備えており、大量生産下でも効率的かつ安定した検査が行えます。SEM画像の濃淡信号を解析してラインプロファイルを生成することで、寸法を正確に算出できる点も特徴です。
2-3.ウェーハ欠陥検査装置
ウェーハ欠陥検査装置は、 ウェーハ上の異物やパターン欠陥を検出し、その位置座標を特定する装置です。欠陥には、異物付着などで予測不能に発生するランダム欠陥と、マスクや露光条件に起因して同一箇所に繰り返し生じるシステマチック欠陥があります。
検出方法は、隣接するダイの画像比較による差分解析や、レーザー照射による散乱光の検出などで行われます。さらに、パターン付きウェーハだけでなく、ミラーウェーハを用いた清浄度モニタリングや受け入れ検査にも利用され、製造装置の状態管理にも必要です。これにより、欠陥の早期発見と歩留まり改善が可能となっています。
2-4.膜厚計
膜厚計は、 塗装や薄膜の厚さを非破壊で測定し、品質を管理するための装置です。塗料が厚すぎればひび割れや無駄を招き、薄すぎれば変色やサビの原因となるため、適切な膜厚管理が欠かせません。
測定方式には、光の干渉を利用する分光干渉式、磁束変化を利用する電磁式、渦電流を用いた方式、赤外線吸収を利用する方式、超音波で厚みを算出する方式などがあります。半導体分野では、分光エリプソメトリーによる極薄膜の高精度計測が主流で、単原子膜レベルから多層膜まで対応可能です。これにより、微細化が進む製造プロセスでも安定した品質を保証できます。
2-5.マスク検査装置
マスク検査装置は、 半導体製造に不可欠なフォトマスクの欠陥を検出し、チップの品質を守るために使用される装置です。マスクは光を用いて回路をウェーハ上に転写する「原版」であり、わずかな欠陥でも製品不良や誤作動につながります。
検査では、外観欠陥や異物付着、パターンの寸法・位置精度などを確認し、必要に応じて修正も行われます。高精度なDUV・EUV検査装置は極微細な欠陥まで検出可能ですが、高額であることから、簡易的にパーティクルを測定できる低価格ツールも併用するのが一般的です。これにより、製造ライン全体の効率化や品質保証を実現できます。
2-6.電気特性検査装置
電気特性検査装置は、 半導体チップや基板に電気信号を入力し、応答を測定することで性能を評価する装置です。車載用ECUやセンサ、インバータ、充電ユニットなど、幅広い電子部品の製品検査に利用されます。
主な検査項目には、交流回路における抵抗を測るインピーダンス、絶縁性の確認、誘電特性の評価、直流・交流電圧を加えて耐電圧を検証する試験などがあります。これにより、外観では判別できない内部特性を数値化し、部品の信頼性と安全性を保証します。製造工程や品質保証において欠かせない検査の1つであり、電子機器の安定稼働を支える役割を担っています。
2-7.バーンイン試験装置
バーンイン試験装置は、 完成した半導体に温度や電圧の負荷を与え、初期不良を事前に検出するための装置です。最終工程で行われるこの検査により、出荷後すぐに不具合が発生するリスクを低減できます。
検査では、半導体を載せる台座であるバーンインボードを用い、PC板上に配置されたICテストソケットや抵抗・コンデンサ・トランジスタなどの部品を介して電気信号を供給します。複数のボードをバーンインテスターに組み込み、温度負荷を加えながら検査を実施するのが一般的です。
2-8.外観検査装置
外観検査装置は、 製品や部品の表面状態を撮影し、画像処理やAI技術で解析することで欠陥を検出する装置です。正常データと比較することで、キズ・汚れ・欠けといった不具合を正確に判定します。近赤外線カメラを用いれば、内部の異常や含有物質の確認も可能です。
検査対象は電子部品からシート・フィルム、ラベルまで幅広く、厚みや色ムラ、貼付位置、印字ミスなども検出できます。半導体分野では、リードフレームの欠陥やパッケージング時の不具合を早期に発見することで、歩留まり向上と品質保証に貢献しています。
2-9.X線CT装置
X線CT装置は、 X線を透過させて対象物の内部を非破壊で可視化し、欠陥や異物混入、構造を検査する装置です。半導体製品や基板などの電子部品検査に加え、産業用X線CTは医療・食品・素材分野などの幅広い分野でも利用されています。外部の受託検査サービスを利用するケースが多いのも特徴です。
X線CT装置では、3Dの断層像を取得することで、クラックやボイド、基板内部のショートなど、外観では確認できない不良を発見できます。主に工程の初期や中間段階での検査に用いられ、非破壊で高精度な内部評価を可能にする検査技術です。
2-10.プローバ・テスタ
プローバ・テスタは、 ウェーハ上に多数形成されたチップに対し、電極パッドとプローブカードの針を正確に接触させ、電気信号を与えて動作を確認する検査装置です。プローバは搬送・位置決めを行い、テスタは電気特性の測定を担います。
この工程で不良チップを早期に検出し、後工程への流出を防ぐとともに、前工程へのフィードバックによって歩留まり改善に役立ちます。通常、ウェーハ中間検査で用いられ、その後はダイシングやワイヤーボンディングを経てパッケージ化されます。最終検査ではハンドラーとテスタを組み合わせ、完成品として再度検査を実施して出荷に至ります。
3. 半導体の製造工程
半導体は、設計から完成品に至るまで多数の精密工程を経て作られます。ここでは、代表的な製造プロセスを順を追って解説し、その全体像を分かりやすく紹介します。
①ウェーハ製造
半導体の製造は、 シリコンインゴットと呼ばれる単結晶の塊をワイヤーソーで薄くスライスしてウェーハを作る工程から始まります。インゴットは高純度シリコンを種結晶から引き上げて作られ、結晶方向が揃った状態を保っています。
切り出されたウェーハは、その後の加工に耐えられるよう表面を研磨し、鏡のような平滑面に整えられます。近年では直径300mmの大口径ウェーハが主流で、生産効率の向上に貢献しています。このウェーハが基盤となり、以降の工程で微細な回路が形成されていきます。
②回路パターン形成
回路パターン形成では、 まず設計段階でシミュレーションを重ね、求められる機能を満たす効率的な回路配置を決定します。その後、設計データをもとにフォトマスクを作成し、光を用いたリソグラフィー工程でウェーハにパターンを転写します。
フォトレジストを塗布したウェーハに露光・現像を行い、不要部分を除去することで回路の原型を焼き付けたら、エッチングで薄膜や酸化膜を削り取り、必要な形状を形成します。この一連の工程を繰り返すことで、複雑な多層回路を高精度に作り込み、半導体の心臓部を形作ります。
③素子形成
素子形成は、 ウェーハ上にトランジスタやダイオードといった半導体素子を作り込む工程です。酸化処理で絶縁膜を形成したのち、CVDやスパッタリングによって薄膜を堆積し、フォトリソグラフィーとエッチングでパターンを加工します。
さらに、不純物イオンを注入して電気的特性を変化させるドーピングや熱処理を行い、素子として機能させます。これらの工程は平坦化や洗浄を繰り返しながら積層され、ナノメートル単位の精度で構造が形成されます。こうして作られた素子が集積回路を構成し、半導体の性能を左右する基盤となります。
④組み立て
前工程で形成されたウェーハは、ダイシング工程で個々のチップに切り出されます。良品と判定されたチップはリードフレームや基板に固定され、ワイヤーボンディングによって金線で電極が接続されます。
この配線作業により外部回路との接続が可能となり、電子部品としての形を整えます。さらに、モールディングにより樹脂やセラミックで封止し、物理的損傷や湿気、酸化から保護します。組み立て工程は、後の信頼性や耐久性を左右するため、精密かつ確実な作業が求められるプロセスです。
⑤パッケージング
パッケージングは、 完成した半導体チップを外部環境から守り、製品として使用可能な形に仕上げる工程です。樹脂封止やセラミック封止によってチップを保護し、リードや端子を成形して外部回路と接続できるようにします。同時に、放熱性や電気的特性を高める役割も担っています。
完成後は、電気特性試験、温度・電圧試験、外観検査などの最終検査が行われ、不良品が徹底的に排除されます。こうして高信頼性を確保した半導体製品は、スマートフォンや自動車、産業機器などの多様な分野に組み込まれ、日々の生活を支えています。
4.半導体の検査を行うタイミングと項目
半導体検査は、製造の各工程で適切に実施することで品質と信頼性を確保できます。ここでは、前工程から最終工程までの検査タイミングと主な検査項目を解説します。
4-1.ウェーハ製造
半導体製造の基盤となるウェーハは、高純度シリコンの単結晶インゴットを精密にスライスし、鏡面のように平坦化して作られます。この段階では、微細な凹凸や不純物が後続工程に大きな影響を与えるため、研磨と洗浄を徹底すると同時に高度な検査が必須です。 光学式表面検査装置や干渉計を用いてnm単位の精度で平滑性や清浄度を評価し、品質を厳格に管理します。
また、高解像度カメラによる外観検査で歪み・割れ・エッジ欠けを検出し、赤外線カメラで異物付着を確認することで、後工程に進めるのにふさわしいウェーハを選別します。このような検査体制によって、高品質な半導体製造の基盤が築かれています。
4-2.回路パターン形成
回路パターン形成は、半導体製造の中でも最も精密さが求められる工程であり、フォトリソグラフィー技術を中心に成膜、パターン転写、エッチングを繰り返すことで、nm単位の微細回路を積層的に作り込みます。ウェーハ上では異物付着やパターンのずれ、寸法誤差などが致命的な不良の原因となるため、 赤外線カメラによる異物検査、電子顕微鏡による詳細解析、測長SEMによる寸法計測などが行われます。
また、電気特性不良を防ぐためにテスタによる検査のほか、ダイシング時の寸法不良を高解像度カメラで確認し、専用の画像解析ソフトウェアで精緻な評価を行います。わずかな誤差も許されないこの工程では、高度な制御と検査技術が不可欠となっています。
4-3.パッケージング
パッケージングは半導体製造の最終段階であり、チップを保護しつつ信頼性を高める重要な工程です。ウェーハから切り出されたチップはダイシングによって分離され、ワイヤーボンディングでリードフレームや基板に接続されます。その後、高性能樹脂による封止処理が施され、外部環境からの衝撃や湿気、酸化から守られます。
この過程では、 ワイヤーボンディング不良や封止不良を防ぐために高解像度カメラによる外観検査が行われ、さらにテスタを用いた電気特性検査で性能を確認します。最終検査を通過した製品のみが市場へ出荷され、スマートフォンや自動車などの多様な電子機器に組み込まれています。
まとめ
半導体は現代の電子機器を支える基盤であり、その品質を左右するのが各工程で行われる精密な検査です。外観検査や電気特性検査といった基本的な方法から、CD-SEMやX線CTのような先端装置、さらにバーンイン試験やファイナルテストまで、多層的な検査体制によって欠陥を早期に発見し、高い信頼性を確保しています。また、製造工程ではウェーハ製造から回路形成、素子形成、組み立て、パッケージングに至るまで、それぞれの段階で適切な検査が実施され、不良流出を防ぐ仕組みが構築されています。半導体に関わる際は検査の重要性に着目し、適切な装置や手法を選ぶ視点を持つことで、製品や事業の信頼性をより高められるでしょう。
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